こんにちは。ハワイ在住 フォトグラファーのマルです。
ちょっと前に、少し個性的な写真用レンズを入手しました。
ニコンの AI Nikkor 50mm f/1.2S です。
発売は1981年。35年前の設計ととても古いレンズなので、解像度もコントラストも逆光下での描写もデジタル設計の今のレンズには到底かなわないでしょう。
しかしこのレンズは未だにニコンの最新カタログにも現行品として掲載されています。
f1.2というf値はニコンのレンズラインアップで現在最も明るいレンズであり、その特徴的なボケ味に魅了される人は多いようです。
とはいえマニュアルフォーカスのみでかつ描写にクセがあるのでなかなかいつもの仕事では使いづらいレンズ。試しに何度か撮ってみたことはあるものの、描写のあまりのじゃじゃ馬ぶりに、本格的に使うのをためらっていました。が、このままでは機材防湿庫の肥しになってしまうので、今回テストシュートをしてきました。
オールドレンズはノスタルジック路線に限る。ロードムービー風にて攻めることにしたよ
低コントラスト、低解像度、低彩度の3拍子揃ったレンズ(笑)ですが、それがともするとレンズの”味”となります。特にちょっと褪せたようなノスタルジックな雰囲気の撮影にハマるかな。というか、それしか活用法が浮かばない。。。
なので今回のテーマは
「現代のハワイで1990年代の"青春18きっぷの広告"っぽい写真を撮る」
に設定。
この頃の青春18きっぷの広告写真は写真界の巨匠・アラーキーこと荒木経惟先生が撮っていました。モデルと私的旅行をしているような、飾らない目線でのスナップ写真が散りばめられた大判のポスター。当時自分は写真学生でしたが、駅の広告スペースに張り出されていたものを今でも覚えています。
今回は以前このブログでも紹介させてもらったハワイ在住モデルのEriさんに協力してもらって、ノスタルジックな雰囲気を求めてノースショアまでショートトリップ。
ロードムービー風に決めたるぜと。
まずは人気のないビーチを求めて島の北西のMokuleiaのビーチに来ました
普段だったらガックリだけど、今回のテーマにとっていい感じに曇ってくれました。
憂いた感じがいいですな。独特のもっさり感です。
ノースは冬は波が高い。荒れ気味の岩礁にて。「火サス」のクライマックスシーンに見えなくもないが(笑)
このレンズの描写はアンニュイな表情がハマる。いろいろな距離で撮ったけどこれくらいがちょうどいいかな。それに無限遠にするとピントがこないのね、このレンズ。
それにしてもこの日のEriさんはモデルというより女優ですな。
そしてMokuleiaから古いサトウキビ工場が残るWaialuaへ移動
工場の古けた壁を背景に。f値は4です。F1.2でも撮ったけど、凄まじすぎるボケはあまり美しくなかった。奥の窓のにじみ方など、これくらいがちょうどいい。
CDジャケット写真っぽく。
なんの変哲もない場所に佇んでもらいました。この辺はもう"モデル力"ですな。
古いネガフィルムからプリントをおこしたような味。ビビットな色合いの花も今回のテーマにとってはいい感じに褪せてくれます。
続いてのロケーションはWahiawa
青春18きっぷ風にするならやはり駅舎の写真が必要。でも残念ながらオアフ島には駅がありません。なのでオアフ島の地理的中心にあるWahiawaのBus Stationに来てみました。
予測不能な逆光シチュエーション。ワイルドに白が滲んでくれます。”待つ女”その1。
ファンキーなワヒアワのバス停の壁画。ノスタルジック路線とはかけ離れちゃうけど思わず撮っちゃった。”待つ女”その2。
コントラストが低いけど、それが写真で独特の柔らかさになるのかな。なんかソフトフィルターかけてるみたいになった。”待つ女”その3。
鉄道っぽさが足りね〜 ってことでコオリナへ
頑張ってワヒアワのバス停でそれっぽい写真を目指しましたが、やはりバス停では青春18きっぷ風では限度があるわ、ってことで古いサトウキビ列車時代の線路が残るコオリナ地区へ移動しました。
これこれ、こんな感じね。青春18きっぷ風。鉄道のないオアフ島で無理やり鉄道感を出すにはここしかないのだ。
この線路は撮影した平日は使われておらず、週末限定の観光用列車の運行のみ使われています。いい感じに痛んでるのですが、それでも使えているのにちょっと驚く。
今回はノスタルジックでアンニュイな感じにしたかったので、笑顔の写真は少なめ。でも最後は自然な感じのスマイルで締めてもらいました。お疲れさまでした。
ハワイで”青春18きっぷの広告風”フォトセッション、いかがでしたでしょうか?
言葉で説明するのは難しいけれど、ハマったときのなんとも言えないもっさり感は最近のカリカリ描写のレンズでは出せない味。それは確かにありました。
正直このブログもみなさんほとんどがスマホで見てるでしょうから、スマホの小さな画面ではレンズの描写はほとんどわかんないと思うんですけどね。
でも今回のようにリラックスした状況で描写のクセを楽しめる状況なら、使っていて楽しいレンズかなと思いました。
Photo & Text by TOMOHITO ISHI"MARU" 石丸智仁
※本ブログの写真及び文章の転載は一切禁止です
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